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UIが世界観と“噛み合わない”違和感

和風アクションゲームを開発中の個人開発者の方から、UIが世界観に合っていないというお悩みをいただきました。
操作性や視認性は確保できているものの、UI全体が洋ゲーライクな印象になってしまい、グラフィックや演出と雰囲気が合わないとのこと。
過剰な装飾を避けつつ和風らしさを演出する方法について、具体的な改善提案を行いました。

相談内容

和風のアクションゲームを開発中ですが、UIに悩んでいます。
操作性や視認性はある程度確保できたものの、全体的に"洋ゲーっぽさ"が強く、グラフィックや演出と浮いてしまっている印象があります。
和風テイストをどうUIに落とし込めば良いか、過剰な装飾にせずに雰囲気を出すにはどうすればいいか相談させてください。

🎮相談者:Iさん(個人開発者・開発経験2年目)

UI/UX診断のフィードバック抜粋

今回のご相談は、コンサルタントの池本が担当しました。

​下記の画像に関するUIのレビューになります。

池本

まず、和風というコンセプトについてもう少し掘り下げてみましょう。実はかなり幅広い言葉なんです。

相談者Iさん

そうなんですね。和風アクションくらいしか考えてなかったです。

 

池本

『和風サイバーパンク』や『和風アイドル』など、いろんなジャンルがありますよね。大事なのは、和風っぽい雰囲気を出したいのか、和の世界を再現したいのかという点です。

相談者Iさん

雰囲気と再現は、たしかに違いますね。

池本

たとえば『ゴースト・オブ・ツシマ』は、雰囲気だけじゃなくて和の再現を目的に作られています。背景や文化、音楽まで本気で和を表現してるんです。

相談者Iさん

自分のゲームはそこまでではないかもしれないです。でも、和を感じてほしい気持ちはあります。

池本

そうであれば、どこで和を感じさせたいかを明確にしておくと、UIや演出の方向性が決まりやすくなりますね。

和の雰囲気を整えるには

池本

装飾しすぎずに和の雰囲気を出したいというご相談でしたが、まずは違和感の原因を整理してみましょう。

相談者Iさん

はい、なんとなく洋ゲーっぽいって感じてるんですが、どこかって聞かれるとちょっと曖昧で。

 

池本

たとえば、右上のミニマップが記号的だったり、左上のバーの質感が浮いて見えたりしませんか?

相談者Iさん

あ、それです。ミニマップとバーが浮いてる気がしてて、言われて気づきました。

池本

さらに言うと、背景の構造物、鳥居や石灯籠などのサイズ感や配置もポイントです。

相談者Iさん

そうか、バラバラに買ったアセットをそのまま置いちゃってるかもしれません。

池本

実はUIよりも、ゲーム画面全体の絵作りが和の雰囲気に影響してることもあるんです。

相談者Iさん

なるほど、まずはどこで違和感を感じてるか、自分でもちゃんと整理してみます!

ゲージについて

池本

では次に、左上のゲージについて見てみましょう。体力ゲージやスキルゲージって、実はゲームの印象を大きく左右する要素なんです。

相談者Iさん

そうなんですね。今はとりあえず目立てばいいかと思って、長いバーを置いただけでした。

池本

今のゲージは直線的で平面的なデザインになっていて、リアル寄りのグラフィックと少し浮いて見えてしまっていますね。

相談者Iさん

たしかに、背景やキャラのトーンと合ってない気がしてきました。

池本

たとえば『SEKIRO』を見てみると、体力バーは少し歪みがあって手描き感があります。色も控えめで血液を思わせるような深い赤。それがあのダークな世界観とすごく合ってるんですよね。

相談者Iさん

あぁ、たしかに、言われて思い出しました。あのバーって不気味だけど印象に残ります。

池本

そうそう。なので、今回の作品でもどんな雰囲気を出したいかに合わせて、質感や形状、色味を見直してみるのがいいかもしれません。

相談者Iさん

今のゲージ、ちょっと太すぎる気もするので、もう少し細めにして、金属っぽい質感を入れてみようかな。

池本

いいですね。あとは、黄色がやや浮いて見えるので、もう少し彩度を落とすと全体と馴染むと思いますよ。

相談者Iさん

確かに目立たせすぎてましたね。ゲームの雰囲気を壊してるかもしれないので調整してみます。

ミニマップについて

池本

では次にミニマップについてですが、システムとしては一般的になってきたので違和感は少ないものの、和のテイストとして見ると少しミスマッチですね。

相談者Iさん

たしかに。今のままだと、ちょっと浮いてる感じがしていて。

池本

そうですね。見やすさは大事ですが、デザインはもう少し馴染むように工夫できそうです。たとえば『ゴースト・オブ・ツシマ』はミニマップ自体を出さず、風の通り道などでナビゲートしてました。

相談者Iさん

あの演出、すごく自然で世界に入り込めますよね。UIが少ない分、没入感もありました。

池本

一方で『仁王』はコンパスを採用してますが、小さく目立たず、映像とよく馴染んでいます。必要なときだけ見る、という設計です。

相談者Iさん

そう考えると、うちのミニマップはかなり目立ってますね。移動中ずっと見ちゃうかも。

池本

その通りです。ミニマップを見ながら進めてしまうと、せっかく作った和の雰囲気を味わう機会が減ってしまうんですよね。

相談者Iさん

たしかに。それじゃ本末転倒ですね。

池本

では、改めてミニマップの目的を整理しましょう。誘導?現在地の確認?それとも敵やアイテムの位置?

相談者Iさん

うーん、メインはイベントの誘導目的ですね。次の目的地に迷わずたどり着けるようにしたくて。

池本

でしたら、最近は光のラインや動物の誘導といった演出で案内する方法も多いです。世界観にも合いますよ。

相談者Iさん

なるほど、それなら没入感を損なわず誘導できますね!

池本

今の課題をまとめると、ミニマップの表示が大きすぎる、見ながら進む構造になっている、さらにデザインが和というより洋寄りなんです。錆びた金属のような質感も、西洋の鎧に見えちゃうんですよね。

相談者Iさん

そこまで気づいてなかったけど、たしかに洋ゲーっぽいかもしれません。和のコンセプトに合うように、もう一度デザインを見直します。

池本

はい、世界観に沿ったミニマップ表現ができれば、さらに一体感のあるゲームになりますよ!

相談者Iさん

ありがとうございます。まずは表示の大きさと、デザインの質感から手をつけてみます!

操作説明ボタンについて

池本

次は操作説明のUIについて少し気になった点がありまして。

相談者Iさん

あ、はい。右下に表示してるやつですね。

池本

そうです。いまは実際のコントローラーのボタンをそのまま出してますよね。でもそれだと、プレイヤーの意識がいきなり現実の手元に引き戻されてしまうんです。

相談者Iさん

なるほど、たしかに没入感を削いでるかもしれないです。

池本

UIの表示自体は全く問題ないので、デザインの見直しだけで印象が変わると思いますよ。たとえば『モンスターハンターワイルズ』だと、右上に控えめに操作表示が出るようになってます。

相談者Iさん

あれ、すごく自然に見えますよね。気になるほどじゃないのに、ちゃんと目に入る感じで。

池本

そうなんです。モノトーンで馴染ませて、重要な操作だけをオレンジの記号で軽く目立たせてるんですよ。

相談者Iさん

色を抑えるってけっこう大事なんですね。うちのはボタンがカラフルすぎるかもしれないです。

池本

操作説明は意識して見てもらうUIなので、常に目立つ必要はありません。むしろサイズと色を抑えるだけで、画面がスッキリして見えます。

相談者Iさん

たしかに。いまのままだと、主役よりボタンのほうが目立っちゃってるかもしれませんね(笑)

池本

UIが自然に馴染んでいれば、プレイヤーはもっとゲームの世界に集中できるようになりますよ。

相談者Iさん

わかりました。控えめだけどわかりやすい表示を目指してみます。

まとめ

池本

今日はたくさんお話させていただきましたが、まず大事なのはやっぱりコンセプトの見直しです。

相談者Iさん

はい、和のテイストをちゃんと言葉にして整理してみようと思います。

池本

迷ったときは、立ち止まってそもそもどんな世界観を目指してたんだっけ?と振り返ることで、ブレることなく開発を進められると思います。

相談者Iさん

たしかに。最近そこがぼやけてた気がしてたので、すごく大事な気づきになりました。

池本

あとは他のゲーム作品もどんどん参考にしてみてください。違和感なくプレイできるゲームって、それだけ丁寧に設計されてる証拠ですから。

相談者Iさん

なるほど、UIだけじゃなくて、全体を通して馴染みが大事なんですね。

池本

その通りです。迷ったらコンセプトに立ち返る。それを習慣にするだけで、きっともっと良いゲームになりますよ。

相談者Iさん

今日は本当にありがとうございました。まずは方向性の言語化から取り組んでみます!

相談者の感想

なんとなく和風っぽさが足りないと感じてはいたんですが、どこがズレているのかを自分では言語化できていませんでした。今回の相談で「和の再現」と「和のテイスト」の違いや、UIだけでなく画面全体との調和が大切だという視点をもらえたのは、とても大きな収穫です。

UIの違和感の原因が、UIそのものではなく絵作りや表示の主張の強さにあるかもしれないという指摘にはハッとさせられました。具体的な改善アイデアもいただけたので、さっそく取り入れて試してみたいと思います。

『困ったらコンセプトに立ち返る』という言葉は、今後の開発でもずっと意識していきたいです。

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